ガレージの中には、清水先生の究極の目標、「ひとり乗り、自動運転」の試作車がありました。
ちょうど10年前に、清水先生が造った電気自動車に乗りました。 慶応大学の藤沢キャンパスでした。ルシオール(フランス語で蛍)という、前後に二人で乗るタンデムのクルマでした。その時の試乗記の一部です。 「自分を乗せたEV(Electric Vehicle)がスピードを出せば出すほど、そのEVに乗っている自分の心の中のエンジンが回転を上げていくのが、はっきりとわかるのである。細かい説明ははぶくが、私が乗った電気自動車は、構造上、重心がとてつもなく低い。だから操縦性能もとても高い」ルシオールが搭載していた電池は昔ながらの鉛電池でした。それでも驚くほどの性能でした。 今回のエリーカはグッと高性能になったリチウム電池です。(これは完全リサイクルが可能です)そのスタイルも、蛍とは打って変わって迫力のある大型車になりました。 期待に胸を膨らませながら運転席に座りました。 運転した感想をひとことで言うと「すごいッ!」に尽きます。 清水先生が口癖のように言う「大切なのは加速感です」が実感出来ます。 停止状態から、スロットルを床まで踏みつけると、“一直線の加速感”に全身が包まれます。加速―Gが、グラフで表しても正に一直線の右肩上がりなのです。 この感覚は、言葉であらわすのがとても難しいのですが、とにかく内燃機関の加速感とは全く違うものです。そして800馬力の物凄い加速は、軽い貧血状態になるほどです。 発進の時に、スロットルを床まで踏みつけても、8輪駆動の恩恵でホイールがスピンする気配もありません。 リチウム電池は二重構造になった床の中に収められています。 クルマのフロアーパネルの下に電池が敷き詰められていると考えて下さい。 ですから、異常なくらい重心が低いのです。コーナリングがとても気持ち良く、ロールは、全くなしと言ってもいいぐらいです。山道を走ってもとても快適でしょう。 更に、最も重要なのがこのクルマの燃費効率です。 同じ大きさの内燃機関エンジンのクルマと比べると、必要燃料はなんと1/4です。 電気は発電所で作られます。そこで、石炭や天然ガス、重油を燃やします。 そこからエンドユーザーのところまで電気は送られて、その電力がこのクルマに充電されて走ります。送電ロスなど全てを計算に入れても、クルマについているエンジンで燃料を爆発させて走るよりも4倍も効率がいいのです。 今もてはやされている燃料電池車では、水素スタンドがガソリンスタンドなみに整備されなければなりません。しかも水素は爆発しやすい危険なものです。 電気自動車は家庭用のACからも充電出来ます。清水先生のお話だと、このエリーカで1キロ走行するための電気代は1円だそうです。 それから、清水先生はふれませんでしたが、エリーカのブレーキフィールは素晴らしいです。ギュッと、絞り込むように確実に効きます。もちろんこのブレーキは、止まる時のエネルギーを電池に戻す回生ブレーキです。 ここまできている電気自動車を、一日も早く実用化して欲しいと、心から思います。
後日、研究室のホームページを覗いてみたら、 今年のクリスマスに200台を販売する予定だそうです。 お値段は¥30、000,000ー